インド古典舞踊サークル

インド・ニューデリーとグルガオンで活動している、バラタナティヤムとカタックのサークルです。

"TRI NAYAN" @ Delhi Tamil Sangam



2月9日(土)にR.K.Puram の Delhi Tamil Sangam にて
バラタナティアムの公演、"TRI NAYAN"が行われました。
踊るのは、グルジー、ラマ先生、ダクシャナ先生の3人。
3世代にわたるダンサーファミリーの、いわば「夢の共演」です。



"TRI NAYAN Tri=three, Nayana=eye)" は、
額に第3の目を持ち、全てを知るものとして崇められているシヴァ神のことです。
また3人のダンサーによる舞台である意味合いも含まれていると思われます。



演目は全部で6つ。
以下は博子さんに解説をしていただきました。

1.シヴァ神に捧げる踊り..."Shiva Stuti" (3人)

2.クリシュナ神に捧げる踊り (ラマ先生)

3.アルダーナリシュバラ (Ardhanarishwar Ardha(=half) Nari(=women) Shwar(=men)(ダクシャナ先生)

アルダーナリシュバラは語源のとおり、右半分がシヴァ神、左半分が妻であるパールヴァティー女神で表わされる究極の神様です。

男性原理も女性原理もすべて内在する、大宇宙、あるいは自然そのものとでもいうのでしょうか。

4.物語 (グルジー)

叙事詩マハーバーラタの一節。サイコロ賭博に負けた王様の妻のサリーが引き剥がされそうとするのを、クリシュナ神が助ける。

5.3人の女性..."Teruvil Varano" (3人)

3人のNayika (ヒロイン)が、“シヴァ神がやってくる!”と心ときめいている様子を表現した作品。

6.Cosmic Dance (3人)

Cosmic Dance = シヴァ神のダンスで、
シヴァ神についての有名なスローカ

Angikam Bhuvanam Yasya Vachikam Sarva Vormayan Aharyam Chandra Thardi Tham Satvikam Shivam
シヴァ神の身体は宇宙です。そして言葉は宇宙の音楽です。アクセサリーは月と星です。そのようなシヴァ神に帰依します。

をグルジーがアビナヤ(表情や手を使った表現)で表現しておられました。




3人がステージに登場して、そろってポーズをとった瞬間、会場はどよめきました。
まるでひとつのレリーフの様に佇む様は、
神様に捧げられる美しいダンスの始まりにふさわしいものでした。




続くラマ先生によるクリシュナ神は、
やんちゃなこの神様にふさわしい動きで、ステージを飛び回ります。
そして乙女たちを魅了したであろう、悩ましげな表情で観客を見つめます。










ダクシャナ先生はシヴァ神とパールヴァティ女神の二役を交互に表わします。
シヴァ神の荘厳で力強い様子と、パールヴァティ女神の慈愛に満ちた美しさ。
ここまで相反する表情を瞬時に変えていく、
その表現力に心動かされました。




そしてグルジーが体全体で語る叙事詩マハーバーラタ。
私たちが日頃慣れ親しんでいる、バラタのダンスとは異なるものでした。
手の動き一つ一つが、あらゆる表情の変化が、
登場する人物の心情や置かれている状況を鮮やかに表わしていました。
動きに激しさや派手さはないものの、
グルジーの一挙一動には観る人を圧倒する迫力がありました。






次の演目には、「シヴァ神を待ち焦がれる3人の女性」が登場します。
やはり一番目を引いたのは、
ダクシャナ先生の「初々しい乙女」ではないでしょうか。
アクセサリーを身に付け、身なりを整える様は、
恋しい(憧れ?)人に対する思慕の念にあふれていました。
そしてその姿がとってもかわいいのです!




最後の Cosmic Dance では、シヴァ神=森羅万象を踊りで表現していました。
ラマ先生とダクシャナ先生親子が一緒に踊るシーンでは、
やはり親子ですね、息のぴったり合った(顔もそっくり!)様子で、
これは調和を表わしているのでは?と勝手に解釈してしまいました。




3人のポーズがフィナーレを飾った時、
会場中に大きな拍手が鳴り響きました。
公演の間、あまりの美しさにずっと息を呑み通しだったので、
ここでやっと「ふぅ〜」と一息つくことができました。
すべてを踊りきって、再びステージに現れた3人も
ほっとして表情で微笑んでいました。
ダクシャナ先生の目には涙が浮かんでいましたよ。
本当に素晴らしい公演でした。


(写真・文: 倉田)